『…すいません。
 俺、彩羽さんが好きで、
 結構迫ってます。

 あと、来宮時雨…翡翠のトップが
 彩羽を襲おうとしてました』

自分のことを先に言って、序に時雨も
巻き添えにした。

それくらいの報復はしたって許されるだろう。

俺の答えに日下さんは数秒黙って、
言った。

「…お前、正直なんだな。

 まぁ、うちの彩羽はやんねぇけど。
 
 とりあえず、回収しに行くわ。

 ありがとうな」

電話が切れる寸前、来宮時雨ぶっ殺す、と
言う声が聞こえた気がした。 

…いい気味だ、ざまぁみろ。

それから数分もなく、黒いベンツが
近くに止まった。

俺は、すぐに日下さんのだと察して、
彩羽を横抱きにして立ち上がる。

お姫様はお城に帰還、か。

名残惜しかったが、仕方あるまい。

車から降りてきたのは、茶髪で
スーツ姿がよく似合っているカッコいい
人だった。

…この人が、あの“日下壮太”なのか。

溢れるカリスマオーラに、圧倒された。

「彩羽っ!」

…って、あれ?