『…葵の友人の赤城高校一年の白鷺由宇
 です』

「…あぁ、赤城のトップか。
 彩羽は無事なんだな?」

俺のことは知ってるらしい。

『…はい』

無事かと言われれば微妙だが。

泣き疲れた彩羽が寝てしまった事情を
正直に告げたら、日下さんの声はまた
低くなった。

「葵が彩羽泣かせた?」

正確に言うならば、葵の幼なじみが葵に
キスしたせいなんだが、まぁ、葵が
傷つけたも同等だろう。

『はい』

見えない圧が押し潰そうとしてくる。

怖ぇな、この人。

「アイツ、役に立たねぇな。

 おい、他に彩羽に手ぇ出した馬鹿は
 いるか」

チッと舌打ちをして、言い捨てる。

“他に”が強調されて、ギクリ。

…もれなく俺もだわ。

ゾクリとする低音ボイスに死を覚悟する。

…ここで負けたら、彩羽に近付けなく
なってしまう。