「お前…何襲われかけてんだよ。

 抵抗しろ、抵抗。

 “王蝶”だろうが」

軽くデコピンされた。

『…だ、だって…変装しなきゃ喧嘩
 ダメって言われてるんです…』

責めるような言い方をされて、
額を押さえながら、私はムッとして
口をすぼめる。

すると、白鷺さんはズイッと顔を近付けてきた。

鼻と鼻がぶつかりかける寸前まで。

どちらかが少しでも動けば、重なって
しまいそうだ。

ハッ、と息を止めれば、
「そーゆーところな」と笑ってすぐに
離れた。

た、試したの?

「そうやって、引きずられんだよ。

 …もし、次こんなことがあったら
 すぐ俺を呼べ」

頼もしすぎるお言葉。

呼んじゃっていいの?

『…いいんですか、白鷺さん』

「…由宇って呼べよ、彩羽」

『えっ』

カフェの時みたく、とびきり甘い笑みを
浮かべて、命令に近いお願いをしてくる。

その顔は…反則すぎ。

な、名前っ?何で?

グッと腰に回された腕を前に引き寄せられた後、頬に何かが触れた。