二度蹴りされたのに、平気で立ち上がる
来宮さん。

口の端が切れたらしく、袖で拭って
不敵に笑っていた。

生命力ゾンビか!

「してたら殺してるから」

殺気立った白鷺さんは、私を抱きしめた
まま。

頭上で睨み合うお二方。

修羅場の開幕だ。

「お前さ、葵恨んでるからって
 好きでもない女誑かすなよ」

「そんなこと言われる筋合いはない。

 彩羽ちゃんがほしいのはほんと」

「物扱いすんじゃねぇよ」

ピリピリと険悪ムードが漂う。

“葵を恨んでる”って、なんで?

来宮さんは、憎悪を滲ませながら
嘲笑っていた。

「俺と愛を裏切ったんだ。
 …当然の報いだよ」

怖いのに、どうしてか、辛そうに見えて。

「…お前」

白鷺さんは、そんな来宮さんを仕方なさそうに見ていた。

まるで、可哀想なものでも見る目で。

「葵と直接向き合いもしねぇで、
 セコいことすんな」

ズバズバと切り捨てる白鷺さん。