そして、そのままの状態で桃李さんは
陰を帯びた笑みを浮かべて、女装している
理由を教えてくれた。

「…私さ、男と女両方の声を出せる
 “両生類”なんだ。

 気分によって入れ替わるの。

 気味悪がられることが大半なんだけど
 ね。

 私は結構どっちの自分も気に入って
 るんだ」

…両生類。

男と女の声が出せる…。

あまり聞いたことがない言葉だったけど、
そっか…そんな凄い技があるんだ。

《気味悪がられる》の部分で、
桃李さんは寂しげな表情をしていた。

それを見て、私は思わず過去の自分と
重ねそうになった。

ー「アンタ、気持ち悪いのよ」

ー「人形みたい、キモ」

施設に入ってからずっと、うまく喜怒哀楽を表現できずにいた私に、大人もこどもも
口々にそう言った。

本当の私を理解されたくなくないのに、
…内心ずっと、寂しかったんだ。