純恋は、俺に微笑んだ。

でも、俺は微笑みを返せなかった。


痛みをごまかすように

強く唇をかみしめる純恋の姿が

見ていられないほど、痛々しかったから。



「あの頃は本気で思ってたんだ……
 狂くんのこと……大好きだって……」


「でも小3の時の俺のことなんて
 忘れていたでしょ?」


その程度の想いだったんでしょ?



「私ね、神社に狂くんが来なくて
 たくさん泣いたの。

 会いたい会いたいって
 何日も何日も泣いたの。

 そんな日々に耐えられなくて
 会えない辛さを消し去るために
 狂くんとの思い出を
 封印しちゃったんだと思う。

 でも……

 一度、初恋を思い出しちゃうとダメだね。

 狂くんはアイドル。
 推しを好きになってはいけない。

 そんなことわかっているのに……

 大好きって気持ちが
 もっともっと膨らんで
 手に負えなくなってきちゃった……」