俺は純恋の肩を両手でつかんだ。

純恋を投げるように、強引に部屋から追い出す。


ゾンビ化が止められない。


俺の心が、どんどん凶暴に

なっていくのがわかる。



個室にこもろうと、ドアに手をかけた時


廊下の壁にもたれかかる純恋が、涙声を震わせた。



「この薬が安全ってわかれば
 狂くんは飲んでくれる?」


一粒だけ薬を取り出し

瓶をバックに戻している。


「純恋……何をするつもり?」


「私が証明してあげる」


「え?」


「息子を大好きすぎる父親が
 自分の人生を犠牲にして作ったこの薬が
 安全だってこと」


まさか……

「純恋が飲むつもりじゃ……」


「安心してね。
 一つなくなっても
 まだ瓶の中に予備はあるから」


ちょっと待って!


その薬は、ゾンビ用なんだよ。

怪物用なんだよ。


まともな人間が口にしたら……

純恋は死んじゃうんじゃ……