「狂くんのお父さんはね
 悪い人たちに
 脅迫されていたんだって」


「脅迫?」


「開発中の薬を渡せって。
 でもお父さんは、断固拒否していたの。

 未完成な薬が
 犯罪に使われたら大事件になるから。

 でもね、実際に
 狂くんがさらわれそうになった。

 家族も薬も、悪い人たちから
 守らなくてはいけない。

 だから狂くんを国に託して
 自分は姿を消したんだって。

 ゾンビになってしまった狂くんを
 人間に戻せるのは
 薬を作った自分しかいないから」


「父さんがそう
 純恋に説明をしたの?」


「うん」


「おかしいよね?」


「えっ?」


「じゃあなんで、俺以外にも
 この世にゾンビがいるの?

 このゾンビ研究所には
 俺みたいな半ゾンビの人間が
 暮らしているんだよ」