しばらく固まっていた純恋。


金縛りが溶けたのか

ハッとした表情で肩を跳ね上げると


ベッドのふちに座る

俺の前まで走ってきた。



「狂くんが目覚めてくれた……
 人間の姿に戻ってる……

 良かったぁ……
 本当に良かったぁ……」



苦しそうな顔で、大粒の涙を

ボロボロこぼしている。



「狂くん、一か月も
 眠り続けていたんだよ。

 もう二度と
 目を覚まさなかったらどうしようって……

 私、すごく心配だったんだから……」



純恋は立ったまま。


ひっきりなしに流れる涙を

両手で拭っている。




俺のために泣いてくれているのに。


それなのに。



なんで嬉しさを

全く感じないんだろう?



泣きじゃくる純恋を

俺は冷め切った目で、睨みつけてしまう。