「フフッ。見ての通り、私の足はあなたの足とは違うの。私は人間じゃなくて、この地に住む水の神・ミヒカヒメノミコト。ここは水の中にある私の屋敷よ」

「えっ……えっと……」

藍は話について行くことができず、混乱してしまう。試しに襖を開けてみると、外の景色は美しい水だった。魚がゆっくりと目の前を泳いでいる。その光景を見て、藍は彼女の言葉を信じることができた。

「何で、水の中にいるのに息ができるんですか？」

「それは、私が息ができるように特別な力を注ぎ込んだからよ。君、よくこの湖の近くに来て眠っちゃうよね。ちょっと心配だったから連れて来ちゃった」

あんなところで寝てたら色々危ないわよ、と心配げな顔をミヒカ姫は見せる。藍は寝顔などを見られた恥ずかしさと、わざわざ屋敷まで運んでくれたことに感謝しながら頭を下げた。

「ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした。こんな立派なお屋敷に連れて来てもらえて、ありがとうございます。そろそろお暇させていただきます」