「そうだ、あの水は!?村の人たちや咲は!?」

咲の安否を考えると、ここでゆっくりしているわけにもいかない。藍は立ち上がろうとするものの、ジャラリと音が響き手足はやけに重い。

「……えっ?」

藍の手には手錠がかけられ、足には太い鎖が巻き付いていた。きっとどれだけ力を入れても外すことはできないだろう。

「ミヒカ姫、これは何ですか?」

どこか嬉しそうな顔をしているミヒカ姫に藍は訊ねる。冷や汗が頰を伝い、心臓がドクドクと緊張から鼓動が大きくなる。ミヒカ姫は蕩けるような目をしていた。

「その鎖は、あなたをここに縛り付けるためのものよ。ここにいれば、あの泥棒猫の元へ行けないでしょ?」

「泥棒猫……?」

藍が訊ねると、ミヒカ姫はフフッと笑いながら藍を抱き締めてくる。もう藍の方が背丈は高くなり、力も強くなったはずだ。だが、何故か彼女に抵抗することはできない。力が全くと言っていいほど入らないのだ。