最初はオドオドしていて俯いてばかりだった咲も少しずつ笑うことが増え、今では何でも話すことができる間柄となっていた。

「すごい!この前できなかった問題、もうできるようになったのね!」

「咲が丁寧に教えてくれるおかげだよ。ありがとう、先生」

藍がニヤつきながら言うと、咲の顔は一瞬して赤く染まる。それを揶揄うと、「もう知りません!」と言いながら咲は頰を膨らませる。そんなところを可愛らしく、藍の中で想いが膨らんでいく。

咲の笑顔、涙、夢を追いかける後ろ姿も、真剣な横顔も、怒ったところも、藍にとってはどれも魅力的で大切な思い出の一つである。

(咲と結婚できたらいいのにな……)

まだ十四歳だというのに、藍はそんなことまで考えるようになっていた。その時、「大変だ〜!!」と家の表から叫び声が聞こえてくる。

「何かあったのかしら?」

「外を見てみよう」

咲の手を引き、藍は外へと出る。他の家からも住民が何事かと外へ顔を出していた。