とある村に住んでいる十三歳の藍（あい）には、疲れた時に訪れるお気に入りの場所がある。

「ふぅ〜、疲れた」

村の外れにある湖を見つめ、藍は大きく息を吐く。そして、柔らかな草の上にごろんと横になった。雲一つない美しい青空が視界いっぱいに広がり、藍はその空に向かって手を伸ばす。この瞬間ならば、空に飛べるようなそんな気がしたのだ。

七人兄弟の一番上である藍は、仕事が忙しい両親の代わりに兄弟全員の面倒を見ている。一番下はつい最近一歳になったばかりで、まだまだ手がかかる。

だが、ずっと家に籠って兄弟の世話をし続けるのは大変だ。一人になりたいと思ってしまう。そんな時に藍は二番目の弟に兄弟たちを任せ、ここに来るのだ。

「ここにいるの、気持ちいいな〜」

村の外れにあるこの湖には、滅多に人が訪れることはない。風が優しく吹き、温かい日差しが差し込み、眠気を誘う。

気が付けば、草むらに寝転んだまま藍は眠ってしまっていた。まだあどけない寝顔を見せ、スウスウと寝息を立てている。