「俺とさ、友達になってよ」

目の前の容姿端麗な男が言っていることが、よく分からなかったから。

つい、

「え、やです」

言ってしまったけれど。

整った顔が、悲しそうに歪んだ。

「ちょっ、おま、なに言って、、、この方が誰か分かって」

「え、え、えやばい人なんですか?わたしこれ断ったせいで殺される感じ?えちょ、どうしよ、なりますなります友達!」

こんなよく分からないことになっているのは、ある出来事が発端になっていたりする。


遡ることけっこう前___。


「おはよー」

「おはよう、真央(まなか)。今日も素敵な女王様っぷりだね!」

「うん。千尋もいつも通りのキモさだね」

私は、真央がつれないー、とこぼしながら後ろの席に座った。

東雲学園、一年二組の教室は、日中の喧騒が嘘のように静かだ。

(まだ人があんまり来てないから。ゆっくり雑談出来て嬉しい)

この春から通い始めたこの学校では、真央という親友もでき、充実した生活を送ることができている。

が、しかし。

この学校にも一応、漫画のようだが、暴走族と呼ばれるものが存在する。

その名も、ノイズ。正直死ぬほどダサいと思うけれど、そんなことを口に出した日にはいろんな方々から目をつけられる。

ので言わない。

彼らは本当にすごい。

この辺りでは知らない人はいない、と言われているくらい有名で、様々な高校から族に入ってくる人がいるらしい。

そしてこちらも漫画のような話だが、親衛隊、と呼ばれる人たちも存在する。

「ね、千尋。これ、お父さんから聞いた話なんだけど。ノイズ幹部の親衛隊、どんどん増えてるらしいよ。学校外にもいるんだって」

真央のお父さまはこの学校の理事長で、おじいさまは運営しているグループの会長らしい。

つまり生粋のお嬢様。

だから聞いた話を話してくれて、あんまりそういうのに詳しくない私でも、情報を知ることができる。

「へぇ、そうなんだ。やっぱ総長とか憧れるよね。幹部と総長のカプは最高」

「うん、だと思った。千尋はそうとしか捉えないよね」

真央からは呆れられているけれど。

端的に言って、私は腐女子である。

男の人と男の人の恋愛模様を、壁になって見つめる、それが腐女子。