「足田さんって付き合ってる人とかいないんですか?」
「ぶっ、な、なに。いないよ!」
「へえ、やっぱり」
や、やっぱり……!? 私って知らないうちにみんなに見下されてるの……?
被害妄想をして、ガクンと項垂れる。
会社でもこんな話しないのに、やっぱり二人で飲みに来るんじゃなかった。
「……もうどうぞ、馬鹿にしていいよ」
「馬鹿になんてしませんよ。僕、足田さんのこと尊敬してますし」
「え……」
「仕事ができるっていうのは大前提ですけど、人のこと見た目とか肩書きで判断しないじゃないですか。僕みたいなのにも優しくしてくれるし。人としても良いなって思ってます」
珍しく饒舌な彼に、ぽかんと開いた口が塞がらない。
「……何ですか?」
「あ、ううん。ありがとう……。あまり、褒められることってないから」
年次が上がるほど、怒られることも、褒められることも少なくなった。だからこそ、睦合くんの言葉が、すっと胸の奥に入り込んできて、じんわりと温かくなる。
「睦合くんってすごくいい子だよね、いつもクールな感じだからわかりづらいけど。みんなに誤解されてるのがもったいないくらい」
にっこりと微笑めば、ボサボサ頭の長い前髪の下で、彼がはにかむのがわかる。
そして、「べつに、みんなにわかってもらう必要はないです」と呟いた。
照れた様子も可愛くて、無意識に彼の頭に手を伸ばし、クシャッと撫でる。
無造作に伸びた髪は見た目以上にふわふわで、いつまでも触っていたくなるほど心地が良い。二度、三度撫でた後で、自分がしていることに冷静になってきた。
「ちょっ……」
「ご、ごめん、つい……。実家の犬に似てて……」
「は……?」
一気に我に返り猛省する。今、私は完全に酔っているのだ。これじゃあ、本当にただのセクハラだ。
急いで手を引っ込めたところで、その手を彼に掴まれていた。
「あ、あの……?」
掴まれた手首が思ったよりも強くて、体を強張らせる。
それほど睦合くんを怒らせてしまったのだろうか。もう一度きちんと謝ろうとすると、その言葉は一瞬のうちに彼の接吻でかき消された。
「んっ……」
お酒を飲みすぎたせいで、しっとりと柔らかくなった唇が重なり合う。
今、何が起きたのだろう。理解に数秒時間がかかっているうちに、結んだ唇からぬるりと彼の舌が侵入した。
互いに水分を含んだ咥内は冷たく、絡んだ舌が余計に熱く感じられる。
咄嗟に押し返そうと彼の胸を叩くけれど、びくともしない。
それどころか腰を引き寄せられ、身動きが取れなくなってしまった。
「っ……ふっ……」
彼が角度を変えるたびに漏れる、なまめかしい吐息と声。あまりに長いキスに、どちらのものかもわからない唾液が、唇の端からつうっと垂れた。
「っ、はぁ……」
やっと解放されると、長い前髪の間から、透き通った瞳と目が合う。
あまりに澄んだ綺麗な瞳に一瞬釘付けになっているうちに、再びキスの予感がして、思い切り胸を押し返した。
「ちょ、睦合くん……!?」
「足田さん、ずっと彼氏いないって噂、本当なんですね」
「え? なんでそんな――」
「キス下手だから」
「っ!?」
歯に衣着せぬ言い方に、もはや反論ができない。どうしてキスしたの、とか聞きたいことは他にあるのに。
「か、からかわないで。私もう帰――」
お金だけ渡して帰ろう、そう思ったのに、すぐに横から伸びてきた彼に囚われてしまう。
「もう少しだけ、一緒にいてください」
「何言って……っ」
しなやかな指に顎を掬われ、二度目の口づけが落とされる。
合わさってすぐに濃厚なものにかわり、ソファに体が沈み込んだ。
酔いが回りながらも、私の中の理性が彼を拒もうとする。けれど、気持ちが良いキスにどんどんと溺れていって、抵抗の手は完全に緩んでしまった――。
「ぶっ、な、なに。いないよ!」
「へえ、やっぱり」
や、やっぱり……!? 私って知らないうちにみんなに見下されてるの……?
被害妄想をして、ガクンと項垂れる。
会社でもこんな話しないのに、やっぱり二人で飲みに来るんじゃなかった。
「……もうどうぞ、馬鹿にしていいよ」
「馬鹿になんてしませんよ。僕、足田さんのこと尊敬してますし」
「え……」
「仕事ができるっていうのは大前提ですけど、人のこと見た目とか肩書きで判断しないじゃないですか。僕みたいなのにも優しくしてくれるし。人としても良いなって思ってます」
珍しく饒舌な彼に、ぽかんと開いた口が塞がらない。
「……何ですか?」
「あ、ううん。ありがとう……。あまり、褒められることってないから」
年次が上がるほど、怒られることも、褒められることも少なくなった。だからこそ、睦合くんの言葉が、すっと胸の奥に入り込んできて、じんわりと温かくなる。
「睦合くんってすごくいい子だよね、いつもクールな感じだからわかりづらいけど。みんなに誤解されてるのがもったいないくらい」
にっこりと微笑めば、ボサボサ頭の長い前髪の下で、彼がはにかむのがわかる。
そして、「べつに、みんなにわかってもらう必要はないです」と呟いた。
照れた様子も可愛くて、無意識に彼の頭に手を伸ばし、クシャッと撫でる。
無造作に伸びた髪は見た目以上にふわふわで、いつまでも触っていたくなるほど心地が良い。二度、三度撫でた後で、自分がしていることに冷静になってきた。
「ちょっ……」
「ご、ごめん、つい……。実家の犬に似てて……」
「は……?」
一気に我に返り猛省する。今、私は完全に酔っているのだ。これじゃあ、本当にただのセクハラだ。
急いで手を引っ込めたところで、その手を彼に掴まれていた。
「あ、あの……?」
掴まれた手首が思ったよりも強くて、体を強張らせる。
それほど睦合くんを怒らせてしまったのだろうか。もう一度きちんと謝ろうとすると、その言葉は一瞬のうちに彼の接吻でかき消された。
「んっ……」
お酒を飲みすぎたせいで、しっとりと柔らかくなった唇が重なり合う。
今、何が起きたのだろう。理解に数秒時間がかかっているうちに、結んだ唇からぬるりと彼の舌が侵入した。
互いに水分を含んだ咥内は冷たく、絡んだ舌が余計に熱く感じられる。
咄嗟に押し返そうと彼の胸を叩くけれど、びくともしない。
それどころか腰を引き寄せられ、身動きが取れなくなってしまった。
「っ……ふっ……」
彼が角度を変えるたびに漏れる、なまめかしい吐息と声。あまりに長いキスに、どちらのものかもわからない唾液が、唇の端からつうっと垂れた。
「っ、はぁ……」
やっと解放されると、長い前髪の間から、透き通った瞳と目が合う。
あまりに澄んだ綺麗な瞳に一瞬釘付けになっているうちに、再びキスの予感がして、思い切り胸を押し返した。
「ちょ、睦合くん……!?」
「足田さん、ずっと彼氏いないって噂、本当なんですね」
「え? なんでそんな――」
「キス下手だから」
「っ!?」
歯に衣着せぬ言い方に、もはや反論ができない。どうしてキスしたの、とか聞きたいことは他にあるのに。
「か、からかわないで。私もう帰――」
お金だけ渡して帰ろう、そう思ったのに、すぐに横から伸びてきた彼に囚われてしまう。
「もう少しだけ、一緒にいてください」
「何言って……っ」
しなやかな指に顎を掬われ、二度目の口づけが落とされる。
合わさってすぐに濃厚なものにかわり、ソファに体が沈み込んだ。
酔いが回りながらも、私の中の理性が彼を拒もうとする。けれど、気持ちが良いキスにどんどんと溺れていって、抵抗の手は完全に緩んでしまった――。