身体が軽い。さっきまで嫌なことたくさん考えてたのに。体がふわふわ浮いてるみたい。階段もあとちょっとで。

心残りがあるとするなら―――。

美波ちゃんと仲直りしたかった。
美波ちゃんと大人になりたかった。
美波ちゃんとの約束、守りたかった。

「ずっと一緒」

美波ちゃんは気が弱そうに見えて、とても強い子だ。私の方が気が強そうなのに、私はとても弱い子だった。

美波ちゃんに伝えたいこともある。

「今まで私と一緒にいてくれてありがとう」

美波ちゃんに直接伝えられなくても美波ちゃんならきっとわかるだろう。

だって親友だから。

私の親友はとても心が綺麗な優しい笑顔が素敵な人。

彼女は私がこの世から消えたらきっと泣くだろう。

けど大丈夫。美波ちゃんを笑顔にできる人は世界にたくさんいるから。

私は思いっきり屋上のドアを開けた。





階段をたくさんのぼり、屋上についた。
屋上の扉は開いていた。
屋上を見ると桜ちゃんの姿が見えた。私は桜ちゃんの方に走った。人生の中でこんなに速く走れるのは今日だけだろうと思った。

「桜ちゃんーっ。桜ちゃんーっ。」

私は桜ちゃんを後ろから抱きしめた。

「桜ちゃんのバカ!大バカ!大大バカっ…!ずっと一緒にいるって言ったじゃん。私との約束破るの?酷いよ…っ。うぅぅ。生きてれば、生きてさえいれば幸せなこといっぱいあるよ。死んじゃったら全部終わっちゃうんだよ。」

私は今までの14年間の中で一番泣いた。涙なのか汗なのかわからない。身体中がびしょびしょだ。

「桜ちゃん。約束して。おばあちゃんになるまで一緒にいて。」

桜ちゃんも泣いている。

「美波ちゃん。さっきはごめんね。迷惑かけてごめんね。美波ちゃんっ。約束だよ。」

ふたりは抱き合いながら小指と小指を絡ませて、泣きながら、笑いあった。

レオくんも青木くんも私たちを見て笑顔になった。

三組の夫婦が誕生し、幸せの家庭を築く物語をみんなが知るのはまだまだ先であった。









私の親友は最強です。

彼女がいれば、虎だって龍だって倒せちゃう。
そんな強い味方です。

生きてさえいれば楽しいことがたくさんあると教えてくれたのば彼女でした。

もし私が進むべき道を間違ったら、彼女は正しい方向に導いてくれる。
もし彼女が進むべき道を間違ったら、私が全力で正しい道に導く。

これからもずっと一緒です。

私は彼女の笑顔を守るために。私は生きる。