行くあてもないまま、ただ闇雲に
歩き続けた。
何処でもいい。
どこか遠くへ―――
とにかくあの家族から離れたい、
その一心で。
だが、やはりそのつもりはなくと
も足が覚えているのか、いつの間
にか見覚えのある場所まで来てい
た。
そうだ。
信用出来るのは、この世にたった
一人だけ。
多少の奇抜さはあっても、俺とい
う人間と真剣に向き合い側にいて
くれる地球上の生物は、真紀子だ
けだ。
茂男は、もう5メートル程先に見えて
いる真紀子の自宅に向かって走り
出した。
真紀子。
俺は…俺には…お前しかいない。
今すぐ行くから待っててくれよ!
玄関はすぐ目の前、という所まで
来てガチャリと内側から扉が開き、
中からでっかいあひるが出て来た
。
え……あひる?
アヒル……あひ……ルー?
茂男は超高速瞬きをしながら、目
の前の光景を見ていた。
一秒間に5回の瞬き。
眼球に乾く暇を与えない、茂男の
得意技だ。
己の高度な瞬きテクニックに酔いしれ
ていると、あひるがこっちに気付
き、歩いて来た!