視界には、優しく微笑み、両手を
広げてあたたかく迎えてくれる家
族の姿――――はなく…


「それは俺のだぞ!」
「あなた3個目じゃない!」
「俺まだ食べてないよ!」


エンゼルパイのコピー商品、ヘンゼルパイ争
奪戦が繰り広げられていた。


これ以上ここには居られない。
このまま居れば……
何をするかわからない。


茂男は流れる涙もそのままに、松
嶋家を飛び出した。