一瞬にして静まり返るリビング。


「俺は、常に自分を保って生きて
きた。
幼き頃から不当に扱われ、普通な
らとっくにグレーテルだろう。」


「「「…グレーテル?」」」


「いや…グレてるだろう。」


「ちょっと強引すぎやしないかい
?」


「いいんだよ、著者がそういう奴
なんだから。
とにかく!とっくの昔にグレてて
もおかしくないって事。
そんな中でもがき、苦しみ、懸命
に生きてきたのは…
形はなくとも、そこには見えない
愛があると信じてたからだ。」


灼けるような喉の痛みと共に、熱
いものが込み上げてくる。
慌てて目を閉じ上を向いた。


茂男の熱弁はきっと、冷血家族の
胸にも響いただろう。
今こそ本当に打ち解ける事が出来
るかもしれない。
見せかけだけではない、本当の家
族になれるかも――――


茂男は、閉じていた目をゆっくり
と開いていった。
愛すべき家族の顔を見るために…