ポケットの中から、バラバラと大量の
紙切れが…


慌ててかき集めるも、茂男はしっ
かりと見てしまった。


「……それ、馬券だよね?」


「…………」


「母さんを騙して、11万円せしめ
たの?」


「いや、俺は10万しか――っ!」


ハッとして口を押さえたが、もう後
の祭り。
父親はガックリと肩を落としうなだ
れた。


「……すまない。
どうしても金が欲しかったんだ。
だから……」


「息子が誘拐されて、チャンスだと思
ったんだね?」


「チャンスだなんて――――
ああ。思ったのかもしれない…
10万円あれば何十倍にもなるはず
だ!って…」


茂男は目を閉じ首を横に振った。