目が覚めた時には、既に辺りは薄
暗くなり始めていた。
「俺…ずっと眠ってたんだ…」
妙な姿勢で寝たせいで、体中が悲
鳴を上げている。
ゆっくりと老人のように立ち上が
る茂男に、顔を出した母親が声を
かけた。
「起きたの?
結局朝食も食べないまま寝ちゃっ
てたからお腹空いたでしょ?
ご飯にするわね!」
そう言って母親はスクランブルエッグ…
はもう作ったので、親子丼を作っ
てくれた。
卵料理ばかりだ。
「父さんは?」
「出掛けたわ。
そうそう!あなたのお箸がね、昨
日割れちゃったのよ。
誘拐されてお箸が割れて…
もう生きて帰ってこないんじゃな
いかと思ったわ。」
そんな事があったのか。
「心配かけてごめん。
もう誘拐されないようにするよ。
」
「そうね、そうしてちょうだい。
」
出された割り箸をわって食べよう
とした時――――
「痛っ!」
指に棘が刺さってしまった。