「頼むよ…早まらないでくれ!」
「おかえり。」
「ただいま。
って…―――母さん!」
振り返った茂男を険しい表情で見
ていたのは、母親。
「いや〜ね。そんな大声出して。
近所迷惑よ。」
「なぁ、どこ行ってたの?」
「え?あ…え〜っと…
さ、捜しに行ってたのよ、あなた
を。」
「…そっか。ありがとう。」
その割には化粧もきちんと施し、
見たこともないような派手なワンピ
ースに身を包んでいたのだが、眠気
と寒気、そして空腹に襲われてい
た茂男には、気付く余裕もなかっ
た。
「それよりどうして中に入らない
の?」
「鍵かかってて、呼んでも誰も出
てこないんだ。」
「あら、父さんも出掛けたのかし
ら?
暁は瑞希ちゃんの家に泊まってる
けど。」
あいつ…中学生の分際で!
ってゆうか、兄が誘拐されてたの
にか!?
「とりあえず入りましょ。」
鍵を開けて入っていく母親の後ろ
を、トボトボとついていくと―――