「それにしてもなんで30万なの?
身代金にしては額が少なすぎやし
ない?」


真紀子の家は、結構裕福な家庭。
身代金がたった30万なんて、考え
られないのだろう。


「だって家の金だぜ?
うん百万とか、うん千万とか請求
しちゃったら、うち破産しちまう
よ。」


今まで借した金と精神的苦痛によ
る慰謝料、合わせて30万。
これくらいなら大した被害にもな
らないだろうと考えた末の金額だ
った。


「まぁ、茂男の存在価値から考え
れば、30万くらいが妥当かもしれ
ないわね。」


茂男は、遠くを見つめて聞こえな
いふりをする。
何気なく公園の入り口に目をやる
と――――


「あ…あれ、親父じゃね?」


まるで散歩でもしてるかのように
のんびり歩いて来る人影。


あのズングリとしたシルエットは、まさ
しくガッツ○松…
いや、茂男の父だ。