23時30分


俺達は、三角公園にあるベンチ裏の
茂みに身を潜めていた。


「さすがに夜は冷えるよな。」


妙に鼻声の茂男が震えながら言う
と…


「しょうがないじゃない。
そんな格好で来るからいけないん
でしょ。」


冷えるのも当然。
もう11月の半ばだというのに、茂
男の格好はランニングに短パン。
若い頃から既にこれだったのだ。


「それにしてもこの匂い…
なんとかならないのか?」


鼻をつまんで眉間に皺を寄せる茂
男にピッタリとくっついていたのは
、浮浪者…ではなく真紀子。


真っ白かった筈のセーターは見事に茶
色と黒に染められ、所々破けてた
りほつれたりしている。
スカートはまるで端切れと化し、動く
度に派手なおパンツが見え隠れして
見る者の気分を害していた。


髪はボサボサ、顔にも泥を塗りつけ
て、ご丁寧に懐には生ゴミまで仕
込むという徹底ぶり。


どこからどう見ても立派な浮浪者
だ。


「文句言ってんじゃないわよ!
誰の為にこんな事してると思って
んの?
もし身代金置いてった後に犯人の
顔見てやろうとどこかで隠れて見
ていたらどうするのよ!」


確かに。
真紀子の顔は両親も知っている。
忘れもしないだろう。
ルー○柴似の濃い顔は。


茂男が身代金を取りに行く訳にも
いかないので、真紀子が考えた末
に、浮浪者になりすますという手
を思い付いたのだ。


これなら公園をうろついていても
怪しまれないだろう。