「俺、誘拐されてみようかと思う
んだ。」
好物のピスタチオをポリポリ食べながら
松嶋 茂男(別名ホモ男)が言った。
一緒になって貪るようにピスタチオを
食べていた彼女の真紀子(別名ルー)
は、大きな目を更に飛び出しそう
な勢いで見開き、聞き返す。
「誘拐?
される予定、あるの?」
「お前…制服がピスタチオの殻だらけ
になってるぞ?」
可愛いと評判の私立高校の制服が
、確かに殻にまみれて悲惨な事に
なっていたのだが―――
「そんな話してんじゃないわよ!
耳遠いんじゃない!?
耳毛剃ってあげようか?」
「いや…いい。」
日常的に繰り返される毒舌に、う
んざりした表情で茂男は首を横に
振る。