デジャヴというのは脳の一時的な認識プロセスの混乱で起こるという話を何かの本で読んだ事がある。
前に一度来たと思うのは、似たような通りを歩いた事があり、その記憶と混同してしまってるのかもしれない。
きっとそうだ。そうに決まってる。自分を安心させるようにジャズバーへの道を歩きながらそう考えた。
しかし、バーにたどり着いて本当にその場所に来た事がある事に気づいた。
【Blue&Devil】というバーの看板を見て、忌々しい記憶が過る。それを振り払うようにブンブン頭を振った。
「どうしたの?」
出入口前に突っ立ってると、若菜に心配された。
「あっ、いや……なんていうか」
楽しみに来たのに嫌な思い出がある店だとは言いづらい。
「春音ちゃん、なんか顔色悪くない?」
若菜が眉を潜めてさらに心配そうな表情を浮かべた。
「早く行こう!」
隣に立っていたゆかは待ちきれないとばかりに私の手を引っ張った。
青い照明で照らされた店内は人でいっぱいだった。
店の奥のステージにはグランドピアノ、ウッドベース、ドラムセットが設置されている。
記憶の中の景色と合致した。
楽しくて残酷な記憶の断片が過り、胸が締め付けられた。
ゆかにさらに手を引っ張られ、人混みの中を進んだ。
「ここにしよう!ピアノがよく見えるし」
ピアノ近くの立ち見の場所を陣取ると、ご機嫌な様子でゆかが言った。
ライブが始まる30分前なのに、もう100人以上の人たちがいた。周りからは楽しそうに談笑する声が聞える。
ゆかも若菜も楽しそう。
過去の記憶に揺さぶられ、苦い想いをしてるのは私だけだ……。
あの人の笑顔が浮かぶ。
親し気に私の事を呼ぶ声や、ライブが終わった後、バーカウンターでジンジャーエールを飲みながら交わした会話や、視線が重なってドキドキした事が昨日の事のように感じられた。
もう7年も前の事なのにあの時の甘酸っぱい気持ちまで甦ってきた。
忘れなきゃいけないのに……。
前に一度来たと思うのは、似たような通りを歩いた事があり、その記憶と混同してしまってるのかもしれない。
きっとそうだ。そうに決まってる。自分を安心させるようにジャズバーへの道を歩きながらそう考えた。
しかし、バーにたどり着いて本当にその場所に来た事がある事に気づいた。
【Blue&Devil】というバーの看板を見て、忌々しい記憶が過る。それを振り払うようにブンブン頭を振った。
「どうしたの?」
出入口前に突っ立ってると、若菜に心配された。
「あっ、いや……なんていうか」
楽しみに来たのに嫌な思い出がある店だとは言いづらい。
「春音ちゃん、なんか顔色悪くない?」
若菜が眉を潜めてさらに心配そうな表情を浮かべた。
「早く行こう!」
隣に立っていたゆかは待ちきれないとばかりに私の手を引っ張った。
青い照明で照らされた店内は人でいっぱいだった。
店の奥のステージにはグランドピアノ、ウッドベース、ドラムセットが設置されている。
記憶の中の景色と合致した。
楽しくて残酷な記憶の断片が過り、胸が締め付けられた。
ゆかにさらに手を引っ張られ、人混みの中を進んだ。
「ここにしよう!ピアノがよく見えるし」
ピアノ近くの立ち見の場所を陣取ると、ご機嫌な様子でゆかが言った。
ライブが始まる30分前なのに、もう100人以上の人たちがいた。周りからは楽しそうに談笑する声が聞える。
ゆかも若菜も楽しそう。
過去の記憶に揺さぶられ、苦い想いをしてるのは私だけだ……。
あの人の笑顔が浮かぶ。
親し気に私の事を呼ぶ声や、ライブが終わった後、バーカウンターでジンジャーエールを飲みながら交わした会話や、視線が重なってドキドキした事が昨日の事のように感じられた。
もう7年も前の事なのにあの時の甘酸っぱい気持ちまで甦ってきた。
忘れなきゃいけないのに……。