「初めまして、阿加麻美菜と申します」から始めた自己紹介を女医が息ひとつ切らさず聞いている。
綺麗に上手にまとめている茶色がかった天然色の柔らかな髪は軽くウェーブがかかっていて、華やかな造形の顔面は器用にメイクが施されていて眩しい。
「よろしくね。私は外科の矢神 葉夏、この彼と同じチームよ」
医者の花形と言われる外科の先生だ。
「波島くん、早速この子連れて来て。また看護師が仕事がつらいって飛んだのよ、これで何人目よ、まったくもう」
飛んだの?! 飛ぶことある?! またって言った?!
いきなり、なにも言わずに辞めちゃうのが日常茶飯事で珍しくないって平然としている院長チームの環境ってどうなの?
ただでさえギリギリの人数で回していたらしく、私の異動は二週間後だったのに理事長の指示で急遽、今ここから院長チームに異動になったって葉夏先生が小走りで説明してくれる。
「阿加ちゃん、しんどくない?」
私のペースに合わせて隣を走ってくれる朝輝先生が声をかけてくれる。
二人とも息ひとつ上がらないんだ。こっちは足がもつれそうで、もう限界。
なんて思った瞬間を感じとったみたいに、「おいで」って私の手を取り走ってくれる朝輝先生は平然としている。
物心ついて生まれて初めて男の人と手をつないだから慣れない。
「矢神先生、新しいリップっすね。今日から変えましたよね、似合ってますよ」
「波島くん相変わらず目ざといわねぇ」
まんざらでもなさそう。
朝輝先生って、よく気が付いて褒めてくれたり助けてくれるのかな。
走りながらどこまで走るかとか、あまり院内を歩き回ったことがない私にいろいろと説明してくれる。
ユリちゃんびっくりしているよね、いきなり私が異動になっちゃって。
緊張したまま二週間いるより、心の準備が出来ないまま飛び込めたから良かったのかも?
クリーレンに入職して一年間、ほとんど外来にいたか病棟で入院患者のケアだったから、これから手術とか経験するんだ。
新しく覚えられる刺激にワクワクするよりも、不安に襲われるほうが大きい。
「お疲れ、アニテク同士が鉢合わせしてヤバイのなんのって」
元気で張りのある声の主はユリちゃんが言っていた整形外科のチャラチャラ塔馬先生だ。
ツーブロックに撫で付けてある髪の毛は真っ黒で、くっきり二重の濃い顔。
ヤバイって言うわりに、そんなに危機感なくて逆に楽しんでいそう。
もう十月なのに、夏の名残りみたいに真っ黒に日焼けしていて二の腕の筋肉も盛り上がっているし、真っ黒のスクラブだから迫力がある。
「この子が新しいアニテク?」
「そうよ、私の妹なんだから手を付けないでよ、だいたいあんたも波島くんも盛りのついたオス猫じゃないんだから落ち着きなさいよ」
汗もかかずに走る葉夏先生が小言を言う塔馬先生をいつも遠くで見ていた。
至近距離で見たら濃い、顔もキャラも濃い。
「お前に妹いたっけ?」
おっきな目で品定めをするように下から上まで見られた。
「胸も背も体も小さくて、くびれがない。本当に葉夏の妹かよ?」
綺麗に上手にまとめている茶色がかった天然色の柔らかな髪は軽くウェーブがかかっていて、華やかな造形の顔面は器用にメイクが施されていて眩しい。
「よろしくね。私は外科の矢神 葉夏、この彼と同じチームよ」
医者の花形と言われる外科の先生だ。
「波島くん、早速この子連れて来て。また看護師が仕事がつらいって飛んだのよ、これで何人目よ、まったくもう」
飛んだの?! 飛ぶことある?! またって言った?!
いきなり、なにも言わずに辞めちゃうのが日常茶飯事で珍しくないって平然としている院長チームの環境ってどうなの?
ただでさえギリギリの人数で回していたらしく、私の異動は二週間後だったのに理事長の指示で急遽、今ここから院長チームに異動になったって葉夏先生が小走りで説明してくれる。
「阿加ちゃん、しんどくない?」
私のペースに合わせて隣を走ってくれる朝輝先生が声をかけてくれる。
二人とも息ひとつ上がらないんだ。こっちは足がもつれそうで、もう限界。
なんて思った瞬間を感じとったみたいに、「おいで」って私の手を取り走ってくれる朝輝先生は平然としている。
物心ついて生まれて初めて男の人と手をつないだから慣れない。
「矢神先生、新しいリップっすね。今日から変えましたよね、似合ってますよ」
「波島くん相変わらず目ざといわねぇ」
まんざらでもなさそう。
朝輝先生って、よく気が付いて褒めてくれたり助けてくれるのかな。
走りながらどこまで走るかとか、あまり院内を歩き回ったことがない私にいろいろと説明してくれる。
ユリちゃんびっくりしているよね、いきなり私が異動になっちゃって。
緊張したまま二週間いるより、心の準備が出来ないまま飛び込めたから良かったのかも?
クリーレンに入職して一年間、ほとんど外来にいたか病棟で入院患者のケアだったから、これから手術とか経験するんだ。
新しく覚えられる刺激にワクワクするよりも、不安に襲われるほうが大きい。
「お疲れ、アニテク同士が鉢合わせしてヤバイのなんのって」
元気で張りのある声の主はユリちゃんが言っていた整形外科のチャラチャラ塔馬先生だ。
ツーブロックに撫で付けてある髪の毛は真っ黒で、くっきり二重の濃い顔。
ヤバイって言うわりに、そんなに危機感なくて逆に楽しんでいそう。
もう十月なのに、夏の名残りみたいに真っ黒に日焼けしていて二の腕の筋肉も盛り上がっているし、真っ黒のスクラブだから迫力がある。
「この子が新しいアニテク?」
「そうよ、私の妹なんだから手を付けないでよ、だいたいあんたも波島くんも盛りのついたオス猫じゃないんだから落ち着きなさいよ」
汗もかかずに走る葉夏先生が小言を言う塔馬先生をいつも遠くで見ていた。
至近距離で見たら濃い、顔もキャラも濃い。
「お前に妹いたっけ?」
おっきな目で品定めをするように下から上まで見られた。
「胸も背も体も小さくて、くびれがない。本当に葉夏の妹かよ?」