晴れ渡った十一月の快晴の空は高く、空気は爽やかに澄み渡り、天が高くなったように感じられる。

 入職時に物品がどこにあるかを覚えてと言われ、すぐに実行していたことが功を奏したのか、最近は医師が言う物品が素早く出せて、仕事がスムーズにおこなうことが出来てきて嬉しい。

 ここずっとゴミ捨てや救急カートのチェックなど外回りをすることが多くて疲れてはいるのも事実は事実。 

 そうは言えども、自分が出来ることから段階を踏んで覚えていかなくちゃね。

「おはよう」
「俊介先生おはようございます」

「いつもありがとう。阿加ちゃんは前に出るタイプじゃないから一見、分かりづらいけど見てる人はちゃんといるからね」

 隼人院長チームに来てから先生たち、それに大樋さんが褒めてくれるから嬉しくて自分でも笑顔が多くなったと思う。

「ありがとうございます、頑張ります」
「それ以上頑張るのかい? 頑張っているの知ってるよ」
 わぁ、嬉しい言葉をくれるんだぁ。頑張ろう、自分のために隼人院長チームのために。

「砂漠の中でも水が豊富な土地には人や動物が集まって暮らしてるわよね。砂漠はクリーレン、砂漠の水は俊介。まさに俊介は砂漠の中のオアシスよ」

「あっ、葉夏先生、おはようございます」

 言うことも素敵だけれど、今日もバッチリメイクで髪もツヤツヤでスタイル良しの美人さんだから、入って来ただけで華やかで見惚れる。

「葉夏先生、良いことおっしゃいますね。まさしく俊介先生はクリーレンのオアシスです」

「さしずめ阿加ちゃんは草食動物だね。周りの肉食動物に怯えて警戒しながら、オアシスの僕でくつろいでいる」
 言い得て妙。

「俊介を見つけたときの阿加ちゃんの安心した顔。まさにオアシスを見つけた草食動物よね」

「僕のそばなら安全だよ。葉夏曰く、僕は安全パイなんだって」
「葉夏先生?」
「俊介と院長は確実に安全パイよ」
「隼人院長もですか?」
「安パイよ、あの人。女の第六感」
 可もなく不可もなしか。

「で、そうそう。波島くん」
 くるりと向き直った葉夏先生はソファーに座る朝輝先生を見下ろしている。

「あんたやることが終わったら、早く帰りなさいって言ったよね?」
「おかえりなさい」
「私は今家から来たところよ? いつも帰れって言ってるわよね?」
「なら、ただいまっすね」

「そんなのどっちでもいいの。夜間の外科コールや救急は? 患者の容態は落ち着いてるの?」

「最近、ものすごく忙しいっすよ。毎日十二時間以上も働いてるなんて信じられないっす」

「みんな同じ境遇、同じボートの上よ。患者はどうなのよ?」