「サラ、そろそろ行こう。」

そう言って、サラに暖かいコートを着せ前ボタンまで留めようとしてくれる。
皆んなが見てるのに恥ずかしいと、

「自分で出来ます…」
と、小声でカイルに訴える。

ベランダに続く窓を開けると冷たい風が吹き込む。
カイルが笛を吹きハクを呼ぶ。

バサァ バサァ と風が巻き起こり空からハクが所狭しと舞い降りる。

「サラ、一緒にハクに乗るか?」
カイルが小声で言う。
「きっとブルーノが拗ねてしまいますから。」
そう言ってサラはブルーノの方へ行く。

「皆さん今までいろいろとありがとうございました。皆さんと過ごした3ヶ月は決して忘れません。また、お会いできる事を楽しみにしています。」
サラは深く膝を曲げお辞儀をしてから、カイルに助けられながらブルーノに乗る。

「じゃあ、またな。」
カイルは軽くそれだけ言ってハクの方へ行こうとする。ショーンはたまらず走り寄りカイルに飛び付き男泣きする。

「ショーン…団長だろ、そんな泣いて部下に示しがつかないだろ…。」
呆れながらも、そういえばこいつとは軍学校時代から10年以上一緒に居たなと思う。

「何かあったら連絡くれ、鳩ぐらい飛ばしてやるから。」
おいおい男泣きするショーンの背中をポンポン叩き呆れながらもカイルは抱きしめられるままになっている。

しばらくそうしていたが埒があかないと、団員に目配せして3人がかりでショーンを引き剥がす。

「鳩じゃダメだ。鷹を持ってけ、ランカを持って来い直ぐに。」

「ランカは1番の働き頭だろ?もっと重大任務の為に使えよ。」
カイルは呆れながら、ハクに跨り出発しようとする。
「待てまて、鷹を持ってけ!!」
ショーンの必死さに気圧されてカイルは苦笑いする。

「分かったから…。まったくなんで俺が鷹の世話しなきゃならないんだよ。」

結局、鷹を渡して満足したショーンと、先が思いやられるという風の団員達をおいてサラとカイルは帰路に着く。

出発がだいぶ遅れて、空気が少し冷えてきた。夕方前には到着したいと、カイルはサラを心配しながら飛ぶ。


この先、きっと何があっても2人離れずどこまでも、一緒に飛んで行けたらとカイルは思う。

2人ならどんな困難でも乗り越えられる。

希望に満ちた未来へ向かって。