「あの…。報告が……。」
当直で警備を担当していた男が、言いにくそうにカイルに話しかける。

「なんだ?手短に言え。」
カイルに変わりショーンが言う。

「実は…12時過ぎ、一報が入ったのですが…。カイル団長が危篤だと……。」

「はぁ?誰からの情報だ?こちらからは送って無いぞ?」

「…それがどこからの情報か確かで無く…ただ…リューク殿が……。」

「リューク殿がどうした?」
埒が開かない団員に向かいカイルが聞き返す。
「青い竜に乗って飛び立ちました…。」

「何処へ⁉︎」
慌てたのはカイルだ。ショーンも凍り付き聞き返す。
「誰がそんなデマを⁉︎」

「ルーカスは⁉︎
ルーカスが一緒では無いのか?」

「ルーカスも姿が見えないのです…。」

「なんだって⁉︎五班班長は?
至急、執務室まで連れて来い。」
ショーンはそう言い、カイルの顔色を見る。

流血で多くの血を失って青白い顔が、今はもっと血の気を失っている。
「俺が指揮を取る。カイルはとりあえず休め。」
ショーンが気を遣って言う。

「休める訳ないだろ!」
この男が正気を失った姿はここ三年、団長に就任してから一度もなかった。

いつだって冷静沈着で的確な判断と指示を出し、同期としても団長としても彼の下で働ける事を誇りに思っている。
大した男だと、一目置いた存在なのだ。

その男が今目の前で頭を抱え苦痛に耐えている。

「マイロ、ルイ様にリュークが居なくなったと報告を。」
それでも気丈にカイルは指示する。

「はっ。」
マイロは急ぎ足で立ち去る。