先生が手を上げ、手を下に下げた瞬間、一斉に私たちは音を鳴らす。
私は、サックスでたまにリードミスをしてしまう。
リードミスをしたらどうしようとか、リードミスしそうだなと考えていたら、予想が的中してしまった。
リードが割れてしまい、音が出なくなってしまった。
なんとかその曲を乗り切り、休憩に入った。
その瞬間、すぐにリードを交換した。
割れたリードを見るたびに、まだまだ未熟だなと思う。
前までは、もっと頑張らないととか思っていたが、今はやる気すら失っていた。
「百花〜」
そんなマイナス思考の時、いつも元気にさせてくれてたのが、春香。
あぁやって、馬鹿みたいに私の名前を呼んでくれるだけで、私は元気になる。
どうしたの?
と聞くと、「まぁ〜たリードミスして!」
ごめんて。
と、答えると
「まっ!今度は頑張ろうね」
といつも、叱ったあとに応援してくれる所が好きだ。
やっと午後の部活も終わった。
発表会やコンクールが近づくと、お弁当を持って行って休みの日でも午後まで部活でつめつめだ。
明日は、朝練も入っていて授業中は眠すぎて、気づくとほとんど寝てしまっている。
春香は、そんな授業でもワクワクして眠いなんて眼中にない。
なんで、そうなんだといつも疑問だらけだ。
少し、体を代わってほしいと願うほどだ。
いよいよ、コンクールが近づいてきた。
私は、相変わらずリードミスばっかりする。
春香もサックスだが、いくら上手いと言ってもミスってしまうこともある。
そのミスった春香を見ると、やっぱり春香も人間なんだと思う。
でも、春香はミスっても何回も何回もやり続けた。
どうして、落ち込まないで練習できるの?
と聞いたことがある。
春香は
『100回失敗しても、101回目は変わるかもしれないから』
と言っていた。
それもそうか、と思う反面私には100回も練習する気力がない。
私は思い切って聞いてみた。
「どうして、諦めないのか。どうして、毎回好奇心旺盛なのか。」
もちろん、回答には期待しなかった。