(え、だって…私…)

言葉を発しようとしたけれど、声にならなかった。
「葵さんの好きにすればいいんじゃないの?」
冷たい声だった。

いつもの笑顔が似合う風太の口調とは程遠いような。
「相談って、それ?悪いけど、用事思い出したから、先帰るね」
目を合わせないまま、チャリ…とクリームソーダ代をテーブルに置き、スタスタとお店から出ていってしまった。

(何で…?私こんなつもりじゃなくて。ただ、私…)

カランと自分の頼んだアイスコーヒーの氷がなった。
ほとんど手を付けられなかったクリームソーダが視界に入る。
確かに風太といたという証に心が締め付けられる。

そこで、気づいてしまった。
ただ風太に「そんなの断れよ」って言われたかった自分に。
風太の声で、その言葉が聞きたかったのだと。
私は初めて風太に対する自分の気持ちを知った。
“大事な人”
私にとって風太は本当にかけがえのない大切な存在になっていたのだと。
気づいた気持ちに胸がしめつけられる。
先程の冷たい声を思い出す。そして血の気が引く。
風太を、怒らせてしまった。