ふわりと碧の頬に柔らかな感触が伝わる。碧が目を開ければ、スクナビコは穏やかな目を向け、碧の頰を小さな手で撫でていた。

「頭を下げなくても、私は医薬の神です。患者(クランケ)が目の前にいれば、必ず助け出します。さあ、村まで案内してくれますか?」

「ッ!はい!」

スクナビコを肩に乗せ、碧は神社の階段を駆け降りていく。そして、村に着くなりスクナビコは顔を顰めた。

「これは……想像以上に悪い状態の人が多そうですね。空気でわかります」

「はい。みんな、苦しんでいます。えっと、まずは誰から診ていただけるのでしょうか?」

碧がスクナビコに訊ねると、スクナビコは少し考える。そして、小さな指をパチンと鳴らした。刹那、辺りを真っ白な光が包み込み、碧は目を閉じる。

「えっ、何で外に!?」

「ここは……誰の家なんだ?」

人の驚く声で碧が目を開けると、碧の目の前に屋根のついた建物ができていた。そして、その中にはベッドが並んており、病人が寝かされていた。そして、その傍らには看病をしていた家族が困惑した様子で立っている。