「は〜い」

スクナビコが文字を書いていき、碧もそれを真似る。その様子を見て、母がどこか安心したような目をしていた。

こうして一日に二時間ほど、碧はスクナビコに勉強を見てもらえるようになったのだ。



気が付けば、スクナビコと出会って一年ほどが経っていた。碧の家はまるで診療所のように村人たちが訪れ、スクナビコに教えてもらったおかげで碧は文字の読み書き・算術ができるようになっていた。

「ただいま帰りました〜!」

いつもと変わらず畑を耕し、碧は家の扉を開けてスクナビコに挨拶をする。母は近所の人に呼び止められたため、碧は一人で帰ってきた。

「碧、お帰りなさい」

スクナビコはいつものように出迎えてくれたものの、どこか様子が変だ。誰も患者はいないというのに、かばんを手にしている。碧の中に嫌な予感が募った。

「スクナビコ様、何故かばんを……?」

「実は、そろそろ神社に戻らなくてはならなくなりまして……」