スクナビコに薬を手渡された碧はフフッと笑う。彼がいてくれるおかげで、母も元気に毎日過ごせるようになった。きっと彼がいてくれる限り、この村に病気や怪我で命を落とす人はいないだろう。

「碧は、寺子屋には行っているのですか?」

ふとスクナビコに訊かれ、碧の額に汗が浮かぶ。ギギギと効果音がついてしまいそうなほどゆっくりと振り向くと、スクナビコは碧の表情で察したらしく、「なるほど」と呟いた。

「スクナビコ様、あたしは農民です。算術がわからなくても、文字の読み書きができなくても、農具を使って畑を耕すことさえできればそれでーーー」

「いけません」

どこか厳しい口調で言われ、碧は口を閉ざす。スクナビコは紙と筆をどこからか取り出し、碧の目の前に置いた。

「文字の読み書き、算術、そういったことを覚えておいて損をすることはありません。できることは一つでも多く身に付けておいた方がいいです。さあ、一緒にお勉強しましょう。私が教えますので」