アンジェラの店は、王侯貴族御用達の仕立て屋だ。 
実家の男爵家程度ではとても相手にされない、超一流高級ブランド。常に流行の最先端をいく、モードリーダーでもある。気に入らない顧客は例え王様や王妃様でも断るとか。

「アスター王子、服を作るんですか?なら、ぼくは別に必要ありませんよね?」
「アドバイスが欲しいんだ」
「え〜…」
「……なんだ、その心底嫌そうな顔は」
「だって、ぼくはセンス最悪ですよ。保証します。絶対恥をかきますって」

何をトチ狂って、わたしのセンスを当てにするんだろう?ここには服のプロがたくさんいるのに。

「いや、おまえに見立てて欲しい」

アスター王子は頑固だった……いくら断ろうとしても、頑として譲らない。

「なんでですか!?どこに行くか知りませんけど、ぼくが服を選ぶくらいなら、裸で行ってください。いつも部屋で裸になってるから慣れてますでしょう」
「おい、人聞きの悪いことを言うな!ベッドの中だけだろう!?」
「ぼくは、ベッドの中ではちゃんと着てますよ!」
「よく着たままだな。暑くなるのに」
「暑くても仕方ないでしょう!ぼくは慎み深いんです!王子は昨夜、ぼくの裸を見たくせに!」
「あ、あれはわざとじゃない!」

わたしたちが言い争うほど、なぜか周りの目が生暖かい目になってるのは気のせいだ。……たぶん。