私は唇を一回キツく噛み締めて、吾妻くんに向き直った。
「初恋の人だなんて、変な事を言って……困らせてごめんね」
「変な事なんて……それに、困ってもないよ……。むしろ、俺の方こそ……」
「(あ、もしかして気を遣わせてるかな……っ?)」
寒い河原で見ず知らずの私に寄り添ってくれた、優しい吾妻くんのことだ。きっと、今だって私のことを考えているに違いない。
初恋の人って思ってくれてたのに、それを無下にするのも悪いなぁ……とか。そういう優しい事を思っていそう。でも、私のせいで吾妻くんが自由に恋を出来ないのは、絶対に嫌だ……!私のことは放っておいていいからね、吾妻くん……っ。
吾妻くんの話を遮って「あのね」と話す。
「私の告白は、気にしないでいいからね。だから、吾妻くんは好きに恋愛してね。私は何にも思わないから大丈夫!」
「え……」
「本当、すっかり変わってたから、一瞬誰だか分からなかったよ~っ。前も良かったけど、今の吾妻くんも素敵だね!」
「……っ」
鳩が豆鉄砲を食らったような顔――というのは、イケメンがしたら、そんなに変な顔にならない。
頭の中がいやに冷静になった私は、そんな事を考えていた。