「……っ」

「倉掛さん……あの?」



何も喋らなくなった私を見て、オロオロする吾妻くん。


――思えば、あの日に会った男の子も寡黙だった。

ボサボサな髪の面影はないけど、少し猫ッ毛な毛先が伸びたら、あんな感じになるのかな?

背は……すごく伸びたなぁ。どうやったら、短期間でそんなに伸びるの?



「あのね…………っ。

ううん、何でもない」

「倉掛さん?」



聞きたいことはたくさんあるのに、何一つとして言葉にならなかった。

質問も、あの日の思い出も……何もかも全て、私の胸の奥にしまい込んでしまう。



「(高校でも、ダメな私だなぁ……)」



ここで逃げるのは、やっぱり私が臆病者だからだ。

キラキラしたしずかちゃんが隣にいるのに、いつもそっちへ一歩踏み出せないのは……いつまでも地味のままでいるのは……きっと私が臆病者だからだ。

弱気――その根っこが、私の体中に絡みついているみたい。