「今日は何の部活の助っ人してるの?」
するとトキくんはムスッとした顔をして「サッカー」と低い声で言った。
「え?じゃあ大橋くんと一緒?」
「うん。だから……。
うるさいから逃げて来た」
手でパタパタ顔を仰ぎながら答えるトキくん。よく見ると、頭から汗が流れている。
持っていた自分のタオルを「まだ使ってないからどうぞ」とトキくんに渡す。
「でも倉掛さんも使うでしょ?」
「いいの。私、昔から汗かかないし!」
盛大なウソを言ってしまった……。どちらかと言うと、皆より汗をかきやすいんだけど……。
でも、汗が冷えてトキくんが風邪ひいてもいけないしね!
「……そうやって何でも他人優先なの、スゴイと思う」
「え?」
「大橋も、改めてお礼言っておいてって、さっき俺に言ってた」
「そっか……うん。私でも役に立ったなら良かった」
大橋くんは、私が代わりに掃除当番になった時に「俺がやる」ってひかなかったんだけど……私がどうしても譲らなかった。
だって、部活に出てほしかったから。サッカーを、頑張ってほしかったから。