「お姉と一緒だ…お姉も、首に虫刺されみたいな痕がある以外に怪我もしてないのに血が足りなくて輸血したって…」

沈黙を破るように、震える声で美奈は呟いた。美奈の脳裏には、ドラキュラの文字が浮かんでは消えていった。信じたくはないが、足りなくなった血や、死んだはずのルナが動き出す理由、ヴラドと呼ばれた男が行った胸に杭を突き刺す行為…すべてがドラキュラに繋がっているような気がした。

「…で、最近のはこれ…」

一番最近の日付の切抜きを取り出した陣の声も低く沈んでいた。それを見ると、ミイラ化した死体が見つかったと、持っていた所持品から身元は判明したものの、整然の面影が全く見られず、一晩でこんなになるのはありえない、そのような内容の文面だった。

「ミイラ…」

胃が競り上がるような感覚に襲われる。口を押さえ、美奈は必死に込み上げてくる吐き気を我慢しようとした。

「美奈、無理は良くないよ…」

ヘンリの声に促されるのと同時に、美奈はトイレへと駆けていった。一番奥の個室に入り、胃から全てを吐き出す。全てを吐き出してもなお、吐き気は収まらない。胃液が吐き出され、喉の奥が熱いのを感じた。

-クスクス-

「!?」

びくっと体が跳ねる。クスクスと笑う声が耳元に近づいてきた気がした。

「だ、れ…」
-モウスグ…-