「いいに決まってんだろ」

「で、でも、私はお兄さんに勝手に決められた相手で」
(りゅう)くんが本当に好きになった人を姫にした方がいいんじゃないのかなって…」

 (りゅう)くんの顔が(はかな)げになる。
「…俺と兄は両親から愛されずに育った」

 え……。

「だから人を好きになる感覚も人の愛し方さえも分からねぇ」
「それでも兄があの日、俺の姫にするのを条件にお前を救った」
「あのまま殺しててもおかしくなかったのにな」

「っ…」

「俺は兄が選んでくれたお前を大事にしてやると心に刻んだ」
「そしてお前と関わっていく内に兄がなぜお前を選んだのかが分かった」

 え?

「強い瞳」

「仲間を自分を犠牲にしてまで守ろうとする姿勢」

「今日も好きでもねぇ俺の為に時間を割いてくれた」
「それがすげぇ嬉しい」
 (りゅう)くんが切なげに笑う。

 (りゅう)くん……。

「だから」

 持ってる缶に(りゅう)くんの缶がぶつかる。

 あ、唇が近づいてきて……。

「キスされるかと思ったか?」
「まだしねぇよ」
 (りゅう)くんに耳元で甘く囁かれ、かあっと顔が熱くなる。