1時間30分後。私達は花の展望台が見えるムーンバックスで休憩することになった。

 テーブルには石窯で焼き上げたフィローネとコーヒーが2つずつ並んでいる。

 ワイン色のレンガの建物で店内は静かで落ち着いた雰囲気…。

「もう外真っ暗だね」

「秋は夜長だからな」

 私は敷かれた花柄の紙に包んでフィローネを一口頬張ると(りゅう)くんはコーヒーを飲む。

「そういや、お前と再会したのは月籠(つきかご)高近くのムーンバックスだったな」

「うん」

「来月の今頃が待ち遠しいぜ」

「なんで?」

「お前が俺の姫になるから」

 胸がきゅっと痛む。

 そんな嬉しそうな顔しないで。


 複雑な気持ちでフィローネを完食し、コーヒーを飲み干した後、ムーンバックスを出て……、30分後。

 枝が散乱し、赤く色づいた裏の林道をバイクで通ると、花の展望台に着いた。

 四角いベンチが一帯にあり、私と(りゅう)くんは芝生に寝転がる。

「星、綺麗っ…」

「ツーリングで族達がよく通って集まる人気スポットだからな」

「でも今日は土曜日なのに誰もいないね」

「あぁ、俺が圧力かけといたからな」

 え……。