「今日の髪はツインか」
 11月22日の昼休み。空き部屋で両膝に寝転がる私に(そら)くんが言った。

「うん、ロックな感じにしたくて」

「ツインって、ロックか? まぁどの髪でも可愛いけどな」
「イチオシはやっぱポニテだけど」

 甘い言葉にくらくらする。

「それでどう? 俺の初膝枕(ひざまくら)は」

「あったかい…猫になった気分…マンションの部屋にいるみたい…」

「ここももう、俺達の部屋みたいなもんだよ」

 ずっとこのままでいたいな…。
 だけど、それは許されない。

「明日って…16時からバイトだよね?」

「あぁ、15時30分には部屋を出る予定」

 明日、私は(りゅう)くんとデートする。
 だからバイトで良かった。
 バレなくて済むから…。

「何時に帰ってくる?」

「22時」

「分かった、待ってるね」

 私は涙を堪えて嘘を付いた。