「嘘…だろ」

 お父さんは苦しそうな表情を浮かべる。


「お前と母さんを守る為に別れたのに」


 え?

「俺にとって暴走族紅嶺(ぐれい)は誇りだった」
「今でも伝説だと受け継がれて」

「だがそれが家族を苦しめることになった」

「恨みを持った族達から嫌がらせをされるようになったんだよ」
「結局、一人では守りきれなくなって…俺はお前達を捨てた」

 嘘でしょ…暴走族が原因だったなんて……。

「それで辿り着いた先がロックバンドの世界だった」

「俺は今、ラルムのギタボを担当している」
「ラルムは涙、もう戻れないという意味も込めてつけた」

 私は複雑な気持ちになる。

「母さんは今どうしてる?」

「分からない…家出たから」

「家を…出た? じゃあお前は今どこに…」

「俺ん家です」
 隣の(そら)くんが代わりに答える。

「君は?」

鬼雪(おにゆき)5代目総長黒沢宙(くろさわそら)です」

 お父さんは驚く。
「君も総長!?」

「はい、雪乃(ゆきの)さんとは親父(おやじ)が再婚した時に出会って義兄妹になりました」