(そら)くんが半券とドリンクチケットを受け取ると、私は扉を強く押して一緒にBARカウンターに向かう。
 そこで(そら)くんはドリンクチケットを手渡し、コーラと交換した。

「はい、雪乃(ゆきの)

「ありがとう」
 私はストローカップのコーラを受け取る。

「どうもラルムです!」

「キャー! リン!!」
 大きな歓声が上がる。

 懐かしい声とエレキギターが重なる。

 ステージを見ずにはいられない。

 セミショートで少し(べに)色に染まった黒髪。
 グレーの口ピアス。
 左耳に紅色のピアスと左腕に同じ色のブレスレット。
 黒ずくめな格好。

 お父さんがステージでエレキギターを弾きながら歌っていた。

 もう、流れ落ちる涙を止めることが出来なかった。

 あ、目が合って…。


「お父…さん…」


 私が名前を呼ぶとお父さんは両目を見開く。

 そして今にも泣き出しそうな顔をするとマイクを左手で握り締めて俯き、歌うのを止めた。