11月18日の高校帰り。制服姿の私は地下のライブハウスの扉前で緊張していた。

 横の壁に取り付けられたDARK NOTEの林檎形看板と、OPENと書かれ吊るされた看板がピカピカと光っていて眩しい。

 お父さんと会わなくなってからもう5年になる……。
 ここにお父さんが……。

雪乃(ゆきの)、手、震えてる」

「あ……」

 (そら)くんは私の右手をぎゅっと握る。
 震えが止まった。

「行けるか?」

「うん、大丈夫」

 (そら)くんはダーク色の扉を引いた。

 中に入ると(そら)くんが受付で前売チケットの料金とドリンク代を合わせて支払う。

 予約は(そら)くんにしてもらった。
 自分の名前だとすぐお父さんにバレちゃうから。