「お待たせしました、月猫スペシャルセットです」
 カラオケ月猫店の部屋で月猫マークが付いた黒のポロシャツ姿の(そら)くんがおぼんを右手で持ちながら言った。

 パシャパシャ。
 あかりちゃんがスマホで連写する。

「おいあかり、撮ってんじゃねぇよ」

「総長が月猫スペシャルセットです♡とか、ぶあははっ」

 (そら)くんの顔が強張る。
(しゅん)、てめぇ、ぶち殺すぞ」

「すんません」

雪乃(ゆきの)、どう? バイト姿の(そら)は?」

「…………」

「おーい、見惚れちゃった?」
 美青(みお)ちゃんの2度目の声掛けで私はハッとした。

「あ、かっこよすぎてついボーッとしちゃった…」

 (そら)くんが、おぼんをテーブルに置くと、
 耀(よう)くんが耳元でコソッと話す。
「…報告どうもな」

雪乃(ゆきの)、楽しめよ」
 (そら)くんは私の頭をぽんと叩くと、部屋から出て行った。