「ほ、本物だ……」

「は?何言ってんの?」





私が何気なくこぼした言葉にも、相変わらず冷たくトゲを刺してくるけど。



それでも今はそれどころではない。



まさか、本物が。本当の本当に、ここにいるのが正真正銘大嫌いでたまらないチャラ大野くんだとは。



いるはずないって決めつけてたから、大野くんの冷たさも全く気にならずに、むしろ感動までしてきてしまう。



その感動を整理するのも、大野くんに何か言うのもとりあえず置いておいて、さっと私のスマートフォンに機材をつなげて適当な音楽を流して。



今日はもう、シャッフルでいいや。


お仕事はこれで完了。多分、なんとか間に合った、はず。



機材の近くに繋げたスマートフォンを置いてから、まじまじと大野くんを見つめる。



……うん、間違いない。この嫌そうな顔、間違いなく大野くんだ。



眉間にシワを寄せて綺麗な顔を歪ませて……いつも通り。