本当に、なにも変わらなくて。いつも私が接する、みんなも接する、遅刻ギリギリで走るりっくんのまま、そんなことを言うから。
どう見たってオオカミなりっくんじゃないのに。
だけど"璃玖"って、そう自分の名前を言うのはいつものきみじゃない。
みんなから慕われるりっくん、が璃玖、と言う。
優しくこちらを見つめて笑っている、いつも私が追っかけている人。
推しだなんだと、いつも追っかけている人。
りっくん、にはどこか……みんなが作り上げた理想像、みたいなところ、あるかもしれない。
でも、優等生で人気者なりっくんも、ちょっぴりキケンなオオカミりっくんも、柳本璃玖くんも、ぜんぶ、変わらない。
同じ、柳本璃玖くんであることにはかわりないのに。
全部、本物、そう思ってる。
「……りっくん?」
「じゃなくて、俺の名前は……」
「……りっくんって、嫌?」