「ねえねえ、ジャンヌさんとセドリックも踊ってみてよ!」

「「え?」」


 けれどその時、突然マリアが思いがけないことを言い出して、わたしと神官様はギョッと目を丸くした。

 踊る? 
 このわたしが? 
 神官様と?


(マリアめ――――一体何を言い出すかと思えば)


 わたしは首を横に振りながら、マリアの傍に身を屈めた。


「マリア、わたしは踊れないよ」

「えーー、なんで? どうして?」

「だって、練習してないもん。素人が練習無しでワルツを一曲踊るなんて無理無理。マリアだって今日のためにたくさん練習したでしょ?」

「うん、した」

「だから、練習してないわたしには無理なんだよ。
でも、神官様は踊れるだろうから、そのへんの誰かと踊ってるところを見せてもらおうか」


 よく見たら、神官様に声を掛けたそうにしている令嬢が、さっきから周りをウロウロしている。
 女性側からダンスに誘えないから、神官様の方から声を掛けてほしいんだろう。
 わたしの言葉にポッと頬を染めながら、彼女たちは期待と不安の入り乱れた表情を浮かべた。


(さて、神官様はどの子を選ぶかな?)


 ここまでお膳立てしたんだもの。高みの見物をさせてもらおう――――そう思っていたら、神官様は唐突にわたしの両手をギュッと握った。